見返りョン

「将来のこと考えとく時だよ!薫ちゃん!!」

美和子があんなこと言うから、そのことが頭から離れなくなって。
このチームが終わったらどうなるのかなーとか、考えてもなかったし。
だけど俺には戻れる部署なんてなく。
右京サンは官房長と古くからの知り合いだし、おそらく警察庁に残るんだろう。
じゃあ俺は?
特命係がなくなった今、俺の行く末はただひとつ。
うんて
んめん.............(無意識に以下略)

「その...、舌の根も乾かないうちにアレなんですけど.....」
考えて、考えついた先は目の前の甘い汁。
こう、いざ瀬戸際になると、わらでもつかみたくなる時ってあるじゃん?
しかも今、目の前にいるのは、俺にやたら好意的な瞳を向けてくれる超大物!
そ−ゆ−汚い欲ってのは前に振り切ったつもりだったけど。
でもやっぱ、不安には勝てない。
「やっぱり、便宜ははかったほうがいい?」
頭ン中で、天使と悪魔が大声でドツきあう。
勝者。あくま。
「....できればっ!」

そりゃ、後ろめたい気持ちもかなりあったさ。
特に、その、右京サンにどう顔を合わせればいいのかな...て。
いやいやいや!別に右京サンがど−こ−言ったって
右京サンが俺に職を与えてくれるってわけじゃないんだ!
それに、あんま後のコトで心配かけたくないし。
美和子にも、右京サンにも。
警察庁を出て、何事もなかったようにすんなり捜査一課に戻ったコトにして。
我ながらイイ考えだ!
....な−とか思ったんだけど。

「それじゃ、かまわないよね」
「...はい?」
言われた意味が解らなくて、とっさに聞き直す。
「ほら。昔からよくあるパタ−ンだよね。
 便宜をはかるためには見返りが必要って」
「へ?」
振り返った官房長が、軽く俺の胸を押す。
別に強く押されたわけじゃないんだけど、なんだかただならぬ雰囲気を感じて
思わず後ずさりしてしまう。
どんどんどんどん後ずさりしていって
「おわっ!!」
知らずに皮張りのソファまで追い込まれて、足をひっかけて倒れた。
「あててて。すみませ......うわっ!!」
頭を起こして、俺たちの構図に気付いてビビった。
不様に転んだ俺の上に、官房長が覆いかぶさってきた。
まてまてまてまて!!何だこの展開は−−!!!
まるで俺が襲われるかのような....。
その先を頭ン中で想像してしまって、蒼白になった。
「ちょっと官房長!冗談はやめてくださいっっ!!」
「冗談でこんなコトできないでショ」
「なおさら悪いですっっっ!!!」
「まさか、本当にタダで捜査一課に行けるとでも思ってた?」
「......え」
「杉下の言うとおり、普段着も良く似合ってるよ」
怪しく耳もとで囁かれて上着の裾から手を這わされて
背中にゾクッとしたものが駆け抜ける。
「ちょ...ちょっと官房長...!」
「大丈夫だよ。こう見えても俺、優しいから」
「いやっ!そうじゃなくって!!」
「少しは静かにしてよ。ム−ドないなぁ」
「む、む−どって...」
「黙ってたら、気持ちよくしたげるから」
「何言って.......んっ....」
弱い部分を触られて、躯がかたまる。
抵抗しなきゃならないってのは、頭で解ってるんだけど。
「ちょっ....何...やって........]
「ふぅん。なかなか良い顔するじゃない」
「じょ..だん.....やめ.......」
「だから、冗談じゃないって言ってるでしょう」
「だったら、何なんです」
「!?」
頭の向こうの扉から、低い声が聞こえてきた。
驚いて顔をあげると、そこには右京サンが立っていた。
「う、右京サンッッ!!!」
「あ−。せっかく良いところだったのにねぇ」
「なっ!!!ち、違います!違いますよ右京サン!!!
 こ、コレには深〜いワケがあってですね...」
「ほぅ。どういう理由ですか」
「だから。さっき官房長にですね...............」
「官房長に.....何です」
「え−..............と(滝汗)」
便宜をはかってもらおうとしてました−なんて、言えるハズもなく。
官房長はいつもの涼しげな顔に戻ってるし
右京サンの視線はいつもに増して冷たくて痛いし。
...................................ι

「うわ−−−−−−−ん!!!!」


「あ、逃げた」


「...かわいいねぇ」
「...............................」
「勝手にヒトのモノに手を出すなって顔してるよ。お前」
「...まったく。ヒトが悪いですねぇ、あなたは」
「そんなに睨まないでよ。ちょっとからかっただけじゃない」
「冗談の通じる相手かどうか、見れば解るでしょうに」
「いつでも真剣だもんねぇ。そ−ゆ−トコがかわいいんだけど」
「ほどほどにしておかないと、噛みつかれますよ」
「あのわんこに?それとも、お前に?」
「...さぁ。どうでしょうか」
「まぁ、どっちでもいいけどね。
 だけどさ」
「...はい?」
「ちょっとくらいからかう権利くれても、いいんじゃないかなぁ」
「ちょっとで済めばいいんですけどねぇ」
「昔のよしみなんだからさ」
「.........ちょっと、出かけてきます」
「よろしくね」


複雑な思いを胸に抱えながら、エレベ−タ−に乗り込む。
だけど悲観的な思いは、もうない。
今はただ、自分を信じて。
自分の思うままに進むだけだ。
彼がいれば、ありのままの自分で居ていいのだと。
指はためらわず、地下1階のボタンを押す。
扉が開けば、目の前はひんやりとした駐車場。
もう見慣れた車の中には、ふてくされた相棒がひとり。
視線はあわせてくれなかったが、近付くとパワ−ウィンドウが開いた。
「こんなところに居たんですか」
「....居ますよぉ」
身体を屈めて顔を伺うも、こちらを見ようとはしない。
根気よく眺めていると、いてもたってもいられなくなったのか
とうとうこっちを向いた。
「あ、あのですね、右京サン。俺は別に、やましいコトしてたわけじゃなくてその....!」
「わかってますよ」
「....へ?」
「少々からかわれただけですよ。あのヒトの悪い癖です」
「な....なぁんだ.......」
気が抜けたのか、シ−トにぐったりと沈む。
その様子を横目で見ながら、助手席に座る。
「だけど...」
「...何スか?」
「あの場で抵抗できないようでは、いささか不安ではありますねぇ」
「ぶっ!!や、だから、抵抗しようとはしてたんですよ!!」
「あれでですか?」
「だから...ですね。その...........」
言い訳の言葉が思い付かなくて、また言い籠る。
自分に正直にしか生きられない不器用な姿が微笑ましい。
「亀山クン」
「.........はい」
「キミのそんなところも、好きですよ」
「え........」
瞳を丸くして、こちらを振り向く。
それには気付かないフリをして、目をあわせずに前を見る。
「さ。行きますよ」
「...はいっ!」

ふたりを乗せた車は、さっそうと動きだした。

12話パロです−。
思いっきり話を組み換えてしまいました。
雰囲気ブチ壊し!ゴメンナサイ!(平謝)
でも、なんとな−く警察庁3人組が微妙な三角関係に見えてしょうがなかった!
元カレ小野田氏も、亀山クンと右京サンの仲を認めちゃって
でもからかうくらい許してよ、ってなカンジを妄想中ですv
なんかみんなでほのぼのしてて、いいカンジvv(楽観的)