白昼の災難

「はぁ...」

背後から大きなため息が聞こえてきて、亀山は少しムッとなった。

「ちょっと右京サン。そんなにあからさまにため息つかないでくださいよ」
「..........」
ちらりと振り返ると、先程から無言な右京からは不機嫌オーラが丸出しだった。
右京はもうひとつ盛大にため息とつくと、重々しくその口を開いた。
「キミの考えにはいつもいたらないところがあって
 肝心なときのツメが甘いことくらい前々からわかっているつもりでしたが
 まさかここまでだとは思いませんでしたよ」
「うう...、だからさっきから謝ってるじゃないですか...」


白昼の大通り。
いささか人通りの多いやや広めの歩道の上を、右京と亀山は歩いていた。
しかし、いつものように先を行く右京の前を亀山がついていくという構図ではなく。
今日は亀山が前に立ち、そのすぐ斜め後ろに右京がぴったりとくっついて歩いている。

そして右京の右手は亀山の左手とともに彼のジャケットに入っていた。

「休日にわざわざ呼び出されたかと思えば、なぜこんな目に...」
「だって俺、脅されたんですよあの電話に!
 あんなこと言われてじっとしていられるわけないじゃないですか」
亀山のもとにかかってきた脅迫電話。
その指示に従い右京は公園に呼び出され、そして亀山の手と自分の手は手錠で繋がれてしまった。
そこまでは良かったのだが...。
「その行動力の良さはかまわないんですけどね。
 そしてそのために呼び出されるのはかまわないんですけどね。
 どうしてそこで、手錠の鍵を忘れて来れるんですかキミは」
痛いところをつかれて、亀山がちいさくうっと唸る。
「だって右京サン、逮捕するときに犯人に手錠かけるの嫌がるでしょ?
 だから俺、最近持ち歩かないようになっちゃったんですよ」
「僕の気持ちへの配慮はありがたく頂戴しておきます。
 しかしあの時にもし目の前に犯人が現れていたら
 いったいどうやって追いかけるつもりだったんですか。
 慌てて犯人を取り逃がすなんてことがあったら、それこそ相手の思うツボですよ」
さすがにふたりして手錠で繋がれてしまっているということを
一般人に見られてしまってはマズいということで
仕方なく亀山のジャケットのポケットで隠すということになったのだが。
ちくりちくりとくる毒舌から逃れたくて、その言葉を遮るように声をあげた。
「あああああ、もうスミマセンすみません!!俺が悪ぅございました!!!!」
「返事は一回で良いです」
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ! スミマセンでしたーーっ!!」
それっきり右京も、それ以上亀山を非難することはやめてくれた。

ひとつのポケットにふたりぶんの手をつっこんで
平日の大通りを並んで歩いていく。
いい年をした男がくっついて行く様子に、すれ違う通行人たちが好奇の視線を向けている。


「...それにしても」
「なんです?」
ふと思い出したように亀山が呟いた。
「こうやって手を繋いであるいていると、まるで俺達デートしてるみたいですよねv
 いてーーーーーー!!!!!!」
ポケットの中で思いっきり抓られて悲鳴をあげた。

こんな状況でいったい何を言い出すのだろうこの男は。
いったい誰のせいでこんなことになっているのか、本当にわかっているのだろうか。


信じられないものを見るような目で、隣に並ぶ部下を睨み上げた。


SECOND SEASONでもヤられてしまいそうです。
あのおんぶに続く伝説が再び産まれ出されるのか!!
いよいよやって参りました。2nd12話手錠前夜祭です−vv
これを書いている時点では本編をまだ見ていないので
おそらく話のつじつまはかなり合っていないと思われます。
その辺は御愛嬌でv
というか、えらく手錠に萌えていたわりには
お話が短いんじゃありませんか、あんなサン??
単に亀山クンのポケットに手をつっこんで歩くふたりが
書きたかっただけなのです。
前にも一度やった構図なのですが、今回は白昼堂々と(笑)

本編でも鍵を忘れてきてたら、それこそシャレにならねーな...。
(ありえない。ありえないから!!)