再開の予感

「筆記試験のみ受験の人は、3番の受付に行ってくださ−い!
 実技も受ける人は1番の受付ね−。
 あ、ほらそこ!走らないで!!」
蝉の声がうるさいほど鳴り響く中、亀山薫はただひたすら叫び続ける。
「あ−、ちくしょう。あち〜〜〜」

真夏の運転免許試験場。
世間の学生は夏休みということもあり、大学生と思われる人々がひっきりなしにやってくる。
炎天下の中、ただひたすら毎日を繰り返すだけ。
恋しくなるのは、よくク−ラ−の効いた極楽な部屋。

かつて特命係に配属されていた頃は、そんな事を言って部屋でだらけていると
いつも右京に怒られて結局はアテのない外回りに行かされたりするのだが。
このクソ暑い真夏でも彼はYシャツのボタンを上まできっちり止め、もちろんネクタイもし。
なのに、汗ひとつかかないのだ。
それから、サマ−ス−ツを手に抱えて。
そう。ちょうど、あんな感じで。

「ん!?」

亀山は、一瞬我を疑った。

Yシャツのボタンを上まできっちり止め、ネクタイもし、サマ−ス−ツを手に抱えて...。

目をこすり、もう一度じっくりとその方向を凝視した。
その人物も、亀山が気付いたことを確認し、軽く会釈をした。
「う、右京サン!!??」
運転免許試験場に異動してから約半年が経とうとしているが、今まで一度も姿を見せたことがなかったのに。
そんな亀山の動揺を知ってかしらずか、右京はゆっくりと近付いてきた。
そして亀山の前に立ち、その姿を見上げた。
「お久しぶりですね。暑い中、がんばっているみたいで安心しました。
 あ、制服姿もよく似合ってますよ」
「冗談じゃないッスよ!やっぱり夏はTシャツが一番です。もう暑くてあつくて」
「おや。冗談のつもりではなかったのですが。
 しかし、警視庁でもTシャツだのジャケットだので登庁してくるのは、キミぐらいのものでしたねぇ」
「そ−ゆ−右京サンは、相変わらず汗ひとつかいてないじゃないですか」
「そうでもないですよ。最近の暑さには、ほんとうに堪えてますから」
そう言いながら、軽くネクタイをゆるめるしぐさをする。
こんな他愛もない会話が、ふとあの頃へ戻ったかのような錯覚を起こさせる。
ちょっとしたなつかしさと淋しさを感じながら、亀山は苦笑した。
「あ、そういえば、突然どうしたんですか?わざわざこんなところまで。
 もしかして、免許の更新とか?それなら7番の受付に...」
「いえ。特別用事があったというわけではないんです。
 ただ、一度くらいはキミのここでの仕事っぷりを見ておくのもいいかなと思いまして。
 それに、改めてあいさつをする前に顔も見ておきたかったですからね」
「...え?」
改めて、『あいさつ』?

「すみませ〜ん」

右京の真意を問いただそうとした時、受験票を手にしている若い女性から声をかけられた。
「ああ、すみません。お仕事の邪魔をしてしまっては。
 それではこれで」
「え!ちょ、ちょっと待ってくださいよ!もしよかったら、ソコの喫茶店でも待っててもらえれば
 オレ、てきと−に抜けてきますから」
「いえ、僕もこれから警視庁に行かなければならないんですよ。辞令交付がありますからね」
「え、辞令?」
「仕事、がんばってくださいね。それでは、また」
「ああっ!右京サ....!」
背中を向けて立ち去る彼を追い掛けようと思ったが、受験生の女の子を放っておくわけにはいかず。
彼女の質問に答えながらも、先程の右京の言葉を反復していた。

「.........『また』って言ったよな、右京サン...」


その後、亀山が呼び出しをくらうのは、30分後のことであった。


ついについに!『相棒 SECOND SEASON』放送決定ですね!!
フライングぎみに、特命係再結成直前の模様を想像してみました♪
や、運転免許試験場での再開は、FIRST SEASONの頃から妄想していたんですけどね(苦笑)
実際TVのほうでは、どういうふうにふたりが再会するのか、たいへん楽しみです。
ちなみにタイトルは『再開』と『再会』をかけていたり(ど−でもいい)

長い間、更新が滞っていて申し訳ありませんでした(><
まだしばらくは、超スロ−ペェスな更新になると思いますが(汗)
実は今回もなかなか手が動かなくて難産だったんですヨ−。
なので短くてスミマセンデス...(言い訳)
小ネタ部屋に入れるかどうか迷ったんですが、久々なのでメインのほうで。

秋にむけて、これからもヨロシクお願いします。