いつでも傍に...ョン

「あ!?なんだ?特命係の亀山ー!」
「いちいちうっせぇんだよテメーはっ!いーから黙って来いっての」
「バカヤロウ!俺はおまえと違って暇じゃねーんだよ。忙しいんだっ!」
「....犯人知りたくねぇのかよ」
「!?見つかったのか」
「おそらくな。とにかく、今から俺らも行くから、お前も来い」
「オイ。どういう風の吹き回しだ?」
「.........うるせぇよ。黙って来いっつったろ」

 ------僕は、真実を追求しないわけにはいかない。

口癖のように繰り返される、あのヒトの信念。
それに触れてしまうと、もう俺は何も言えなくなってしまう。
だけど、だからって自分の身を犠牲にしてまでやることか?
.....あのヒトなら、やりかねないけど。


「さっ。行きますよ。亀山クン」
あらゆる推理の行き着く先が一点に定まったとき、おもむろに右京は立ち上がった。
真犯人のもとへ行くために。
だが、コートを手にしようと一歩踏み出した足がふらついた。
「......っ」
「右京サンっ!」
とっさに駆け寄り、肩をささえる。
右京はこめかみに手をあて眉間にしわをよせてつらそうにしている。
「大丈夫ですか?」
だが右京は亀山の手を払い除け、それでも行こうとする。
「平気ですよ。これくらい」
「少し休んだほうがよくないッスか?」
「それはできません。こうしている間にも、犯人は逃げてしまうかもしれない。
 それだけは避けなければなりません」
行きますよ、と声だけかけて、もう歩き出している。

俺はまた、後ろをついていくことしかできない。
止めることができないのなら、いつでも支えていられるように傍に居ようと。


犯人が伊丹の車に乗り込み、連行される様子をふたりで見送る。
なんとか事件解決となり、右京は安堵の息をつく。
「彼を呼んだのは、キミですか?」
「え?ええ...」
「キミにしてはめずらしいですね。手柄を譲るような真似を自らするなんて」
「今回は特別です。今からやらなきゃなんないことがあるんですから」
「........?まあ、とにかく戻りましょう」
歩きだそうとした右京の腕をとっさにつかんだ。
「どうしたんです?」
少し驚いたような顔をして見上げてくる。
亀山はつかんだ腕をそのままに、警視庁とは反対の方向へ歩きだす。
「どこへ行くんですか。まだ勤務時間内ですよ」
「いーんですっ!こっちで」
いささか肩を怒らせて右京を連れてがんがん歩きだした。

慣れた手つきでオートロックを解除し、合鍵で扉を開けて中へはいる。
そして寝室に連れ込むと右京をベッドに座らせる。
「....亀山クン」
「はい?」
「今何時か、キミはわかっていますか?」
「3時です」
「正確には2時52分ですが。まだ勤務時間だということも、わかっていますよね」
「もちろんです」
「だったら......」
亀山を押し退けて立ち上がろうとする右京を、さらに強い力で押し止める。
「ダメですっ。今日の仕事は終わり!ゆっくり休んでください」
「そういうわけにはいきません。さ、戻りますよ」
「右京サン。ここ2週間まともに寝てないでしょ」
亀山の台詞に驚いて目をまるくした。
感付かれないようにそういう態度は表に出さないようにしていたつもりなのだが
すっかり見抜かれていたようだ。
たった一度だけ、不覚をとったが。
「だいたい、右京サンが倒れちゃったら仕事どころじゃないスよ。
 体調管理だって、ちゃんとしてもらわないと困りますっ」
「....まさか、キミにお説教されるとは思いもしませんでした」
「もう、右京サン.....」
「ですが」
心配そうに覗き込んでくる顔に苦笑しながら、ゆっくりと身体をおこす。
「なんだか目が冴えてしまって、休もうにもなかなか寝つけそうにないんですよ」
そう言いながらまたコートに手をのばそうとするもんだから
ついむっとなって、力任せにベッドに押し倒した。
「......っ!」
捕まれた腕が痛かったのか、顔に苦悶の色がはしる。
「亀山クンっ」
「だったら、眠れるようになるまで疲れさせてあげましょうか」
「..............え」
一瞬、右京は後悔した。
どうやらとうとう、この男を怒らせてしまったようだ。
乱暴な手つきで、ネクタイをほどかれる。
「ちょっ、やめなさ....」
「もう事件は解決したんだから、あなたは休んでいればいいんですよっ!」
「亀山ク......んぅ...」
抗議の声を、口唇でふさがれる。
荒々しい口づけにも、どこか優しさが滲み出ていて抗えなくなる。
流されるままに、理性を滑りおとした。

濃厚な吐息が交じりあう。
脇腹のあたりをゆるく撫でられて、甘い痺れが身体を襲う。
「...右京サン。痩せました?」
「.......そう....ですか?」
「もしかして、メシもまともに食べてなかったとか」
「.....かないませんねぇ、キミには」
「もぅ、ダメですよ右京サン。ちゃんと自分も大事にしてあげないと」
あまりの心配されように、思わず笑いが漏れる。
そしてふてくされる彼を宥めるように、腕を首にまわす。

心配されるのが心地良いだなんて
そんなコトを言ったら、また怒るでしょうかねぇ?




「...ん。..........ん?」
真っ暗な部屋で目を覚ました。
部屋をぐるりと見回して、サイドボードに時計を見つける。
6時。
遮光カーテンのおかげで、朝なのか夕方なのか一瞬混乱する。
だるい身体をもう一度休めようと枕に頭を預けたとき、亀山はふと違和感を感じた。
寝る前にはあったはずの腕の中のぬくもりがいない。
あわてて身体をおこす。
「右京サ...!いてて......」
右腕の痺れで、つい先程までこの腕の中に彼がいたことがわかる。
とりあえず下着とズボンだけ身につけて、部屋の外にでた。
するとキッチンのほうから何やらいい匂いがしてきたので、ついつられて扉を開けてみる。
そこには、だぼっとしたパジャマを身にまとった右京が立っていた。
「ああ、目が覚めたんですか」
ふりむいて、笑顔を向けてくれる。
亀山も、つられて顔がゆるむ。
「おはようございます。...何してるんスか?」
「少しお腹がすいたので。軽く食べようかと思いまして」
右京の後ろに立って、腰に手をまわしてくっつく。
右京も嫌がるでもなく、身を任せている。
嬉しくて、後ろから首筋に顔をうめる。
「....いい匂いッスね」
「リゾットですよ。簡単なものですけどね」
「うまそうッスね」
「味見してみますか?」
小皿を取ろうとしたところを顎をとられて、キスされる。
「........亀山クン」
「えへへ。ごちそうさまです」
上目遣いに睨むと
亀山はいたずらが成功した子供のように、おどけてみせる。
「......じゃあ、ごはんはいらないですね」
「ええーっ!食べさせてくださいよー!」
じゃれてくる犬に、思わず苦笑する。
右京が本気で怒っているわけではないと解ると、亀山も肩の力を抜く。
「あ−でもよかった。食欲も戻ってきてくれたみたいだし」
「大丈夫ですよ。キミがいてくれれば」
「....右京サン」
「僕が疲れたときには、休ませてくれる人が、ちゃんといますから」
「もちろんです!もう右京サンのコトならな−んでもお見通しですからね♪」
「ふふ...。それはそれは、頼もしいですねぇ」
「あっ!笑いましたね!!」

だから安心して、自分のしたいように動ける。
背中を任せていられる。
そして、それはお互いに。

「さ、そろそろ食事にしましょうか」
「はい♪」

3333Hit。上田絵美サマに捧げます。
リクエストは『疲れてる右京サンを薫クンが無理矢理監禁してでも休ませてあげる。
密室での薫クンの右京サン一日奉仕v』でした。
だったんですが....。
思いっきりリクエストから逸脱してますね、わたし...(目そらし)
あやしく看病どころか、思いっきりヤッてるしよ!(涙)
申し訳ありませんです(><
楽しんでいただけたのなら幸い...。
とりあえず、無理矢理ってトコだけクリア−ってコトで(マテ)

...ちなみに伊丹ン。良いように使われたダケでしたね(ぼそ)

リクエスト、ありがとうございましたv
これに懲りず、またキリ番踏んでやってくださいまし(苦笑)