初日の出

海岸に小さな影がひとつ。
ロングコートの裾がはためいている。
ひとりで寒い想いをさせたくなくて、早く傍にいきたくて
砂の山を駆け登る。

「右京サンっ、はい。どうぞ」
「どうも」
ポケットに入れたふたつのあたたか〜い缶を取出し、そのひとつを手渡す。
右京はまるで大切なものを扱うかのように、それを両の手でつつみこむ。
「おしるこ…ですか」
「正月ですからねー。ちょっと気分だけでもと思って。あ、ひょっとして、嫌い…でした?」
「いいえ。いただきます」
白い息の合間にひとくち飲んで『暖まりますね』と微笑めば、
亀山も嬉しそうに笑う。

「それにしてもキツかったっスねぇー。
 何が嬉しくてあんな深夜に初詣に行くんだか」
大晦日の深夜からふたりはある神社前の警備にあたっていた。
午前0時を狙って訪れた参拝客に振り回されて、ようやく解放されたのが先程。
「おや。キミは行かないんですか?初詣」
「あんなの別に3日あたりに行ったって一緒じゃないスか。
 わざわざ人ゴミの中に行かなくても」
「キミらしいですねぇ」
「右京サンは元旦に行く派ですか?」
「そうですねぇ。仕事のない年は」
「へぇー」

帰りに寄り道をしようと言い出したのは亀山で
だったら海岸に行こうと言ったのは右京だった。
初日の出を見るために。

「あ。はじまりますよ」
明るくなってきた海の向こうの空が、急に赤に染まる。
あたり一面が赤の世界となって、幻想的な空間につつまれる。
ふと振り向くと、右京の顔も赤に照らされて、その表情が映える。

惹かれるように、キス。

「...甘いですね」
「おしるこ味、ッスか?」
「そうですねぇ」
「おしるこは、嫌いですか?」
「あまり食べるほうでは、ありません。
 でも...」
「でも?」
「忘れられない味になりそうです」
「いっそ、病みつきになっちゃいます?」
「また調子に乗って......んっ....」

赤がようやくおさまってきたころ、ようやく口唇が離れる。
お互いに寄り掛かりながら、しばし見つめあう。
「...右京サン」
「はい?」
「今年も、どうぞヨロシクお願いします」
「ええ。こちらこそ」
真剣な顔つきで一礼をされて、思わず笑いが漏れる。

『今年も』という言葉は、以前では想像がつかなかった。
だけど、これからは。

「では今年は、さらにビシバシいかせてもらいましょうかねぇ」
「えっ!?これ以上にッスか!?勘弁してくださいよぉ〜」
海岸を歩き出す右京の後ろを、離れずについていく。
砂浜にふたりぶんの足跡を残しながら。
「もし良ければ、これから初詣に行ってみましょうか」
「うげ。マジっすか?すごいヒトなんじゃないッスか」
「大きなところに行こうとするから、そうなるんです。
 穴場なんて、どこにでもありますよ」
「ああ、そっか。なるほど。
 んじゃ、右京サンの『穴場』教えてもらえます?」
「ええ、喜んで。行きましょうか」
「はいっ」

来年も、その次の年も
またいっしょに同じ日の出が見れますように。

あけましておめでとうございます2003(笑)
かなり短いですが、お正月からラブラブなふたりでした。
ちなみにロケ地は、おんぶで有名なあの10話の海岸を御想像くださいvv
(ソコこだわり)
今年はわたしも、相棒(佐伯/笑)とともに
穴場の神社へ初詣にいってきました。
おみくじは吉(ふつう)だったけど、酒まんじゅうが旨かったのでヨシ(何が)

2003年もヨロシクお願いしますv




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