桜舞散る樹の下で
春。
遅咲きの桜が、散りはじめたころ。
あの公園の樹の下で
あなたは、泣いた。
『別れましょう...』
ただひとこと。
震える感情は、押し殺して。
もうわたしでは、あなたを癒すことはできないでしょう。
穏やかな時間を与えてやることもできないでしょう。
あなたを束縛することはできない。
あなたの笑顔を奪うような真似はしたくない。
もし、このわたしの存在が
あなたに寂しさを、悲しみを与えるだけなのならば
いっそこの身を引いた方が
あなたのためなのではないのかと。
今、行おうとしている行為そのものが
あなたの笑顔を奪うものだとわかっていても。
だけど、あなたは。
桜舞散る樹の下で、ひっそりと笑っていた。
『...はい』
穏やかな笑顔で
静かに泣きながら。
まるで、こうなることを予感していたかのように。
あなたを、愛しています。
その言葉は、永遠に、心の中に。
そっと閉じ込めて。
「...そんなコトもありましたねぇ」
思い出話に酔いながら、注がれる酒に目をやる。
「そうそう。桜の綺麗な時期だったわぁ」
あの時の彼女は、今もまだ、自分の隣にいる。
あのときの、微笑みのまま。
「ねぇ、覚えてる?あの後あなたが言った言葉」
「さぁ...。何でしたか」
「『別れる』って言った直後だったのに
『あなたのお店の常連客にしていただけませんか』だって。
思わず、笑っちゃった」
「ふふ。よく覚えていましたね」
「忘れないわよ。でも、まさか今もそのままでいてくれるなんて、思わなかったわ」
嬉しく思いながら、でもどこか罪悪感を感じて。
そんな感情を表に出さないように、酒に口をつけた。
あの時の事を、今さら謝るのは禁忌。
ふたりの想いを、ふたりの決意を、すべて無に還してしまうことになるから。
いまのままでいいんだと。
静かに言い聞かせながら。
「あの時は、こんなにも店が長続きするとは、思いませんでしたからねぇ」
「まぁっ。失礼しちゃうわ!」
あの頃より歳をとっても、穏やかな空気が壊れることのないように。
「すみませんが...」
「ん?」
「だし巻きを、いただけますか」
「はい。ただいま」
しばらくして、良い匂いが部屋中にたちこめる。
気分も良くなって、また一口酒を飲んだ。
「あら、そういえば」
「はい?」
「だし巻きって、薫クンの大好物じゃなかったかしら?」
「Σ...っ!!......ゲホッ」逆流ついで(笑)に
右京vたまきをやってみました。いかがでショ。
第10話の、たまきサンと美和子サンのやりとりを見ていて
なんだか右京サンとたまきサンの過去にイロイロ妄想を駆り立てられてしまいました。
そしてわたしが推測するに
1.右京サンはたまきサンと結婚して、英国に留学した。
↓
2.右京サンは帰国して、小野田サンに対策本部特命係に任命された。
↓
3.危険な仕事についてしまったため、たまきサンを悲しませないために離婚。
↓
4.自分のために身をひいた右京サンを気づかって、笑って離婚を受け入れたたまきサン。
健気や−−vvv(←けっこうノ−マル好き)
というわけで、10話終了時点での想像物語でした。
本編では、大きく話がズレてしまうのかな...(苦笑)
ちなみに、右京サンと亀山クンの仲を
たまきサンが薄々勘付いているのがミソです(爆笑)