冷たい手

ふいに感じた温度差に驚いて
とっさに手を引いてしまった。


触れあった指先。


だけどすぐに手をとって
手のひらでその指先を包み込む。


その冷たい手をあたためようと。

自分の体温をわけあたえようと。



「右京サン、手....つめたいですね」


しばらくそのままで納まっていたそれは
やがてじゃれあうように絡み合い
指の間に指をからめて、握り込んだ。


「....手のつめたい人って、心のあったかい人だって言いますよね」

「そういうキミは、あたたかい手をしてますね」

「だって俺、心のつめたい人間ですから。
 だけど」


握り込んだ手をぐっと引き寄せ
近付いてきた躯を、己の胸で受け止める。

指先にも体温が伝わり
いつの間にか、互いの温度差もなくなって。


「貴方といれば、俺の心もあったかくなりますから」


亀山の言葉に右京は微笑を浮かべて
そして、ひっそりと呟いた。


「それでは、この冷えた躯もあたためてもらえますか?」


欲に濡れた瞳で見つめあい
亀山もまた、ひっそりと微笑んだ。


「もちろん。寒さなんて感じなくなるくらい
 あたためてあげますよ」




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