遊園地
ふたりを乗せたちいさな箱は
徐々に高いところへと昇って行く。
どこまでも どこまでも
捜査という名目でやってきた遊園地。
さすがにこの歳にもなって(子持ちならまだしも)遊園地にもないだろうに
俺のこころは、どこか浮かれていた。
目の前に、この人がいるから。
「やはりここからだと、景色が一望できますね」
俺の下心を知ってか知らずか、観覧車へと誘い込まれた。
狭い空間に、ふたりきり。
彼は犯人の行動を分析するために、下の景色を魅入るように眺めているが。
「あ。亀山君。あそこ」
「え?ドコっすか!?」
彼の呼び掛けに身を乗り出したとき
ふと、彼の匂いが鼻についた。
やさしい、やわらかい香り。
指し示す方向を捜すふりをして
跳ね上がる鼓動を必死に押し殺す。
ずっとこのままでいられたら、俺は....。